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徳の影 - 失ったもの、見つけたもの (Lost & Found)-Part3

徳の影 - 失ったもの、見つけたもの
(Lost & Found)-Part3


兵卒クラッグ(Private Crag)は自分を誇りに思っていた。彼は一流になれたのだ。俺にとっては、もうスリ行為なんてくだらないものだ。もう路地裏でサイコロ賭博なんて俺には似合わない。遂にまっとうな仕事に就いたのだ。クラッグは、ドアの彼の持ち場から薄暗い部屋を監視していた。そこには彼の他にたった2人しかいなかった。彼らは彼の給料よりいい生活をしている。そうだ。この俺の状況。これが一流というものだ。

部屋の中央には輝く球体があり、制服姿の男と、露出度が高く威圧的という独特な衣服で着飾った女をかすかな青い光が照らしていた。男はその派閥での高位幹部、トードストーン中尉(Lieutenant Toadstone)である。女は比類なき暗黒の支配者ミナックス(Minax)、その人であった。

トードストーン中尉が沈黙を破った。「ご覧になったでしょう? ご主人様。私が言った通りになりました。失われしものが見つかったのです」彼は鼻につくような微笑みを浮かべた。

「確かにそうね」

数週間前、ドーン女王(Queen Dawn)、デクスター(Dexter)、アベリー(Avery)、そしてねずみのシェリー(Sherry the mouse)がロード・ブリティッシュ(Lord British)の宝物庫における発見について議論しているのを、ミナックスは輝く水晶球の中に見ていた。

「トードストーン、よくやったわね……」ミナックスは台座から球体を取り、しっかりと握った。「間もなく、私は失われたクリスタルを再び手にすることでしょう。そして、ロード・ブリティッシュがいない今、誰も私のトランメル全土支配を止めることは出来ないのよ!」彼女は小さな映像をじっと見上げて不遜な笑みを漏らした。

クラッグは出入口の彼の持ち場で、その発言の後に最適な彼女の笑い声にとても感銘を受けた。これはまさしく彼が加入した理由そのものである。「我々が所在を把握した今、我々がそれをどのようにして手にいれるかですな。女王様?」トードストーン中尉はお辞儀をしながら言った。

ライトニングの爆風がトードストーンを壁に吹き飛ばした。「それは誤った質問よ。トードストーン!」ミナックスは金切り声を上げた。すぐに彼女はいつもの魅惑的な態度に戻り、水晶球を台座に戻すために恥ずかしそうに向きを変えた。「じゃぁ、もう一度やってみなさい」

答えがない。少し後に、ドサッ、という音がした。

ミナックスは急いでトードストーンの元に戻った。ある扉の影の中で、彼はうつ伏せに倒れていた。ミナックスはきょろきょろした。「冗談はおやめ、トードストーン。倒れていても何にもならないわ。正しい質問はこうよ。『貴方が私のために手に入れてくる』」

トードストーンは動かなかった。

クラッグは、ミナックスが部屋を横切りトードストーンのそばでかがんでいるのを見たので、無視される事は特典と言えるな、と密かに思った。しかし、事の重大さの衝撃で、一瞬にしてぱっと注意力が戻ってきた。ミナックスは何かを調べていた。どうやら、壁のコート掛けの杭が折れ、中尉の背中から突き出ているようだ。ミナックスは素早く手を引っ込めると、吐き気を催し、唇を歪めた。悪心が苛立へ変化するのは早かった。彼女は立ち上がって周りを見回し、誰かがこの事態に気づいていないかどうかを確認した。

ただ一人の目撃者。それはクラッグだった。

彼女のマスカラは濃かったが、トードストーンの躰を検分するのと同じような厳しさで、兵卒クラッグを見た。ミナックスはスワンプドラゴンがボグリングに微笑むようにクラッグへ微笑んだ。「護衛、お前の名前は?」

「クラッグです。ご主人様」兵卒クラッグは、面倒な状況のただ一人の目撃者であることの意味するところを知り、十分速く走り、トードストーンの運命から逃れんと決心しようとしていた。

「トードストーン中尉はメイジ評議会を偵察するためにマジンシアへ発ったところよ。彼は数日間戻ってこないでしょうね……。そうよね?」

「はい。ご主人様。その躰の処分は私が致しましょうか?」

ミナックスは口が裂けているのではないかと思うくらいの満面の笑みを浮かべた。大きい歯が煌いていた。「あなたは新しい役職、中尉としてよくやってくれてるわ……でも、それは違うの」さりげない身振りでミナックスは別のライトニングの爆風とともにゲートを開き、故トードストーン中尉をそこへ吹っ飛ばした。

クラッグははっと息を飲んだ。「あなたのクリスタルを取り戻す方法を私が見つけ出しましょうか?」

「素晴らしい意見ね。クラッグ中尉(Lieutenant Crag)。どういうプランを持っているのかしら?」今、ミナックスは彼の真正面に立っていた。彼女の奇妙な香水の香りは彼の思考を混乱させる。

クラッグはブリテインの裏通りで過ごした時代の経験でのし上がったのだ。きっと、あのときの経験はこの昇進を生き残るのに十分役立つだろう。「うーん……。私の計画は、バッカ……いや、コーブの港に行き……、そう、情報を買おうと思います」

ミナックスは何かを詮索するかのように、彼を一瞬見つめた。その後、背筋を伸ばし、クラッグへウィンクをし、去るために向きを変えた。「お金がいるのかしら? 中尉?」

クラッグは、ミナックスとの初めての会話が成功裏に終わりそうで安堵した。しかし、エンディングではあるが、まだ終わってはいない。彼女が詠唱の時に使った手はまだ光を帯びている。彼は、背後の壁が平面かつ滑らかであることを素早く確認した。「大丈夫です。ご主人様。賄賂のために何かを盗もうと計画しておりますので」

ミナックスは立ち止まり、満面の危険な微笑みをたたえてクラッグへ振り返った。「いい答えね、中尉。適任者を選んだと確信してたもの」彼女は再びウィンクをした。「今、もし本当に私を感激させたいと思っているのなら、数週間前、サー・ジョフリー(Sir Geoffrey)がブリテインの傭兵たちへの餌に使っていたチェストを盗みなさい。あれなら施しになるわよ」

「わかりました。ご主人様」クラッグはミナックスがドアから出て、向きを変え、ホールへと消えて行く様を息をしないで見ていた。深呼吸をし、彼女が聞いていないことを確認するため、ゆっくりと部屋を出た。さて、彼は思った。中尉という立場はほとんどバッカニアーズ・デンの若者になった感じとそっくりなんだな、と。結構だ。とにかく現場がより自分に適しているのだ。ミナックスの秘密要塞の石床のせいで背中が痛くなっていたのだから。
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徳の影 - 失ったもの、見つけたもの (Lost & Found)-Part2

徳の影 - 失ったもの、見つけたもの
(Lost & Found)-Part2


アベリー隊長(Captain Avery)はドーン女王(Queen Dawn)の前で直立不動の姿勢を取っていた。主のフランセスコ卿(Lord Francesco)は亡くなり、今や彼はどの軍にも属していないというのにである。 身についたクセはなかなか抜けないものよね、 とシェリー(Sherry the mouse)は思った。

この少し前、ドーン女王と魔術師デクスター(Dexter)が部屋で活発に議論を行っている所にアベリー隊長が入ってきた。この議論にはねずみのシェリーも参加していたのだが、彼女はソファの下、ちょうど脚の近くにいたので、アベリーは彼女に気付かなかったようだ。彼の登場で、明らかにこの三人はきまり悪い状況に陥ったようだった。

「これは、お邪魔して申し訳ございません。 出直してまいります」

「いえ、お入りなさい。ちょうどあなたの事を話していたのです」 とドーンは半ば弁明するように言った。

「了解しました。女王陛下」 こうして彼はびしっと直立不動の姿勢をとったというわけである。

「そう硬くならなくていいわ」 ドーンはいつもの活気を取り戻して笑みを浮かべた。「閲兵式じゃないのよ」 彼女は彼に手を差し伸べた。アベリーは歩み寄り、額が彼女の手の甲に触れるまで深々と礼をした。 少なくとも、敬礼以外の態度で応じることは出来るようね、 とシェリーは思った。

彼の(不器用とはいえ)礼儀正しい振る舞いに、女王は頬を染めた。「この城での待遇は、満足していただけて……?」 彼女は口ごもった。

「はい、女王陛下。今までよりずっと素晴らしいです」 快活な笑みを浮かべてアベリーは答えたが、急いでこう付け加えた「もちろん、フランセスコ卿の兵舎で生活していたときに比べて、という意味であります」

あらあら、 とシェリーは思った。 これじゃドーンとデクスターはできることならソファーの下に消えてしまいたいとでも思ってるでしょうね……。あんなひどい目にあったのに、アベリーは苦難に耐える素晴らしい人だわ、 とシェリーは心の中で思った。

八ヶ月前、軍で輝かしい実績を重ねていたアベリーは、カスカ(Casca)によって統治評議会暗殺の容疑でユーの牢獄に送られ、死刑執行を待つ身となった。晴れて解放されたのはつい最近のことだ。様々な出来事が勃発したせいで、彼のことは単に忘れ去られていたのである。「うっかり無実のあなたを八ヶ月も牢にとどめてしまったことは、本当に、本当に、本当に申し訳なく思っています」 という気持ちを率直に伝えるため、ドーン女王はアベリーを賓客として城に迎えたのである。

牢獄に入ってから彼は変わったわ、 とシェリーは考えた。 前より穏やかになったみたい。 以前シェリーが城内で彼を見かけたときには、いつだって早足で歩き、敬礼し、報告し、新しい命令を受け、そして早足で立ち去っていた。ユーから戻って以来、アベリーは一日の大半を庭園や岸辺で過ごしている。彼はブリテインの喧騒を離れ、草や太陽や海を楽しみたいのではないかと思えた。彼の衣服でさえ、以前よりもくつろいだものになっていた。リネンシャツとソフトレザーブーツが最近の彼の制服だったのだ。

「あなたの素敵なお話がきっかけで、シェリーが重要な発見をしたのです」 ドーンが息も詰まるような社交的な所作から上手く気を取り直せるようになってきたことにシェリーは気付いた。練習を積んだに違いない。

冒険のきっかけとなった物語を思い出して、シェリーは笑みが漏れた。 アベリーなら、間違いなくリカルド(Ricardo)の完璧な真似ができるわ。だって牢獄であの男と一緒に過ごした時間はたっぷりあったはずだもの。

シェリーの心の中のアベリーは、前かがみの姿勢になり、片方の眼を見開き、反対側の眼は細め、リカルドとそっくりのボサボサ頭の近くで指を振り始めた。「ロード・ブリティッシュ(Lord British)の宝物庫は、オレたち泥棒にとっちゃ伝説の場所よ! あん中には値打ちもんが入ってる。ロード・ブリティッシュの所蔵品だってんで余計お値打ちもんのシロモノがよ! そんなお宝の中には、二面性のクリスタル(The Crystal of Duplicity)ってぇブツがあるんだぜ。これはミナックス(Minax)がトランメルへ侵攻したときに、ロード・ブリティッシュがあの女(アマ)から取り上げた物なんだ……」

ドーンの方を向いていたアベリーは向き直って彼女をまっすぐに見据えた。「これはこれは。シェリー殿。一体何があったのです?」 急に彼から話しかけられ、妄想から引き戻されたシェリーはどぎまぎした。 わたしに気付いてたの? 思わずソファー下の奥に飛びのきそうになったものの、彼女はなんとか踏みとどまった。

「わたし、宝物庫と……クリスタルを見つけたの」 とシェリーは踏ん張って言った。

「まさか、冗談でしょう」 アベリーは当惑した表情でドーンに向き直った。「あれは哀れな痩せ男から聞いた与太話です」
「与太話かどうかはともかく、とにかくクリスタルは存在し、ここにあるのよ。この秘密をバラすかどうか、私たちは決めようとしているのです」 とドーンは続けた。「そしてもちろん……どうやってバラすかということも」

シェリーは眉をひそめた。その表現は使わないようにと彼女はドーンに言ったのに。上品な言葉ではないのだから。

「でも、それだけではありません」 とドーンは嬉しそうに言った。「デクスター、彼に話してやって」

「ああ、ええ、はい」 ドーンとアベリーの両者を見やりながらデクスターは話しはじめた。「ええと、私の研究によれば、シェリーの証言によるクリスタルは、あのニスタル(Nystul)が所有していたクリスタルと同一の品と考えられまして……、その……ニスタルというのはですね、フェルッカからトランメルを切り離し、トランメルを守護する呪文を編みだした人物でありまして……」

「ニスタルは存じ上げております。デクスター殿」 と、うなずくアベリー。

「デクスター、手短にお願い」 と、いらつきながらドーンは言った。

デクスターは顔をしかめたが続けた。「その、私の理論が正しければという前提になるのですが、そのクリスタルは実際のところ……」

「呪いを打ち払ってマジンシアを再興できるんですって!」 たまりかねたドーンが口をはさんだ。「もう長いこと復興を試みてきただけに、とても信じられないわ! でも、彼がクリスタルを使えばそれが可能だと思うんですって! アベリー、あなたには隊を率いてその復興を成し遂げてきて欲しいのです」

デクスターは話の途中で口を開いたまま固まり、そしてアベリーは目を大きく開いた。「おお」 と、アベリーは興奮で声を漏らしたが、気持ちを静めて床に視線を落とした。「親愛なる女王陛下、そのようなお言葉をいただき、まことに光栄に存じます。しかし、お受けすることはできません。ここに伺ったのも、実はお暇をいただこうと……。再び任につかせていただく前に、自分が自由であることを確認する時間が私には必要だと思っているのです」

その少し後、シェリーと女王はアベリーが城門をくぐって去り行く姿を見送っていた。シェリーの目には涙がこみあげてきた。彼と共に行こうかとさえ一瞬考えたほどである。彼が去れば寂しく思うに決まっているし、彼のそばにいる時はいつだって楽しかったのだから。そして、ドーンも同じ気持ちであることに彼女は気づいていた。

徳の影 - 失ったもの、見つけたもの (Lost & Found)-Part1

徳の影 - 失ったもの、見つけたもの
(Lost & Found)-Part1


年月を重ねた城壁の隙間に潜り込むと、シェリー(Sherry the Mouse)のひげは期待に震えた。彼女はずいぶんと長い間、王の間の奇妙な背の低い壁の背後に何かがあると思っていた。だが、通り抜けられるほど基礎の石が緩んでいる場所を見つけることができたのは、最近になってのことだ。崩れた石を取り除く作業は、尻尾へのいくらかの苦痛を伴なう経験だったが、しばらくすると城の使用人たちも手を貸してくるようになった。作業の結果は新しいねずみの穴として結実した。シェリーは埃まみれになってしまったが、毛皮に破片が絡まっていても、発見への期待感を妨げるものでは決してなかった。間もなく、彼女はどんなネズミも行ったことがない場所へ行けるのだから!

空気は淀み、むせ返るほどの埃が舞い、時間と共に重苦しい雰囲気が辺りを包んだ。狭い隙間を自分の身体を引っ張るようにしながら進み、向こう側の部屋にシェリーがたどりついた時、彼女は驚いて目をまたたかせた。部屋の中がほのかに明るかったのだ! 注意深くその光源を探しまわると、シェリーは絹のようなものが束になっているものをみつけた。明かりはその中から来ている。シェリーは用心深くチューチューと鳴いて後退しながら、爪を伸ばし、埃まみれの生地を突いた。すると、年経た布は裂け破れて崩れ落ち、奇妙な半透明の物体が現れた。

警戒しつつも、シェリーは調査のためにゆっくりと近づいていく……。
2010.7.9 FC2移転
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どうでもいい?管理人情報
北斗のムーングロウに最初のキャラが誕生。 その後、ロストランドが実装された時にデルシアに移住(トランメルができるまでデルシアが拠点となる)。 死の街やオアシスに毎日のように通ったが、PKも毎日のように襲撃してきた(おかげで逃げ足スキルは向上)。 過去何度か休止期間があり、2013年6月に復帰したものの仲間が引退または休止中でぼっち状態に・・・

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